このチューリングの翻訳は、もともと 英文の web サイトを 見て「原文が web に 載ってるくらいなんだから、翻訳を公開するのもいいだろう」 という適当な気持ちから始めたものである。翻訳してしまってから、さて どこに許可を取ればよいのかと考えた。Oxford University Press の web ページを見ると、学術雑誌の権利を扱っている部署があったので、 とりあえずそこにメールを送ってみた (こんな部署が専門にあるとは 知らなかったが、学術雑誌は結構いろんなところで引用されたり するからだろう)。
返ってきた返事は「US $200 で www への掲載を許可する」 というものだった。うーん。これはちょっとキツイ。そこまで金払って 自分のページを維持するというのもナンだ。しかしそのとき すでにプロジェクト杉田玄白の リンクから訪れてくれている人は 沢山いたのである。悩んだすえ、この申し出は断わって、 杉田玄白からはリンクをはずしてもらおう、と思い山形さんにメールした。 山形さんをはじめ、このページを読もうとしている方々に申し訳ない気持ちだった。
…ところが山形さんからは「もったいない、金はこちらで持つから 買ってしまいましょう」との力強いお返事。激感激! 「ただし!」と彼。 「そのまま $200 払うのはアホらしいから値切ってみて、どうなるか 見てみよう」…だそうな。なんつうか、ホントにこういうのが好きなんですね、 このかた。以下は彼が提案してきた「値切りメール」の原文である:
Dear XXXXX Thank you very much for your swift reply. Now, I must say that $200 for non-profit use seems rather expensive. It is my understanding that the text in question will enter the public domain in 5 years, since Alan Turing passed away in 1954. $200 for a 5 years right for a single short article seems a bit steep, especially considering the fact that the conditions will not allow any commercial gain (not that I intend to achieve any), and that I am simply trying to do this as a service to my fellow researchers and science enthusiasts all over Japan. I understand your position as a commercial entity, and of course, this is, after all, an Alan Turing essay. Obviously, I wouldn't expect to be granted rights for nothing. However, is the $200 figure negotiable? Considering my feeble bank account, the sagging Japanese economy, my income status as a not-so-wealthy student and also the extremely high cost of living here in Tokyo, would US$100 be out of the question? I await your reply. Thank you very much. Best, SHINYAMA Yusuke
いやー、さすがだと思いまたね、この人。 よくぞここまでこっちの状況を克明に (笑) 書いてくださった! で、いたく感動した (同時にウケた) ぼくはこれを言われたとおり (XXXXX のだけ相手の名前に書きかえて) そ のまま相手に送った。
するとどうです、やりましたよ山形さん! 相手が見事に「翻訳してくれたんだし、 $100 でいいよ」と言ってくれた のだ。このことを本人に伝えると「わははは。元バックパッカー 国際びじねすまんの交渉力を見よ!」 だそうで、しかし こんなにうまくいくなら、もっと値切っとけばよかった、だって。
つまりそういうわけで (どういうわけだ)、これから国際的に 活躍しようと思っている人は、この程度のツラの皮は身につけよう。 山形浩生に学べ!
(いや、マジで感謝しています。 山形さんありがとうございました)